
九州新幹線西九州ルートの未整備区間を巡り、国と佐賀県の間で言葉の応酬が続いている。今月16日、国土交通省の水嶋智事務次官と佐賀県の山口祥義知事は非公開の意見交換を行い、その後の発言が注目を集めた。両者はこのやり取りを野球の投球になぞらえて表現したが、その評価には大きな隔たりがある。議論の焦点は、武雄温泉―新鳥栖間の整備のあり方に絞られている。
国土交通省の水嶋次官は面会後、ルートを特定しない形での環境影響評価(アセスメント)の実施を提案したことを報道陣に説明した。記者団から自身の提案が山口知事への「ボール」であるか問われると、水嶋次官は自信をのぞかせた。水嶋次官は「決してビーンボールを投げたつもりはない。ストライクゾーンで真ん中のストレートを投げた」と発言し、誠実かつ直球の提案であることを強調した。この発言は、停滞する議論を前進させたい国の強い意向を示したものとみられる。
これに対し、佐賀県の山口知事は24日の定例記者会見で、国側の認識とは異なる見解を示した。山口知事は自身の受け止めについて「私から見るとかなり高めだった。だが、バットに当ててとりあえず打ち返したつもりだ」と述べ、国からの提案が容易に受け入れ難いものであったことを示唆した。県側は、フル規格での整備に伴う多額の財政負担などを懸念しており、慎重な姿勢を崩していない。この発言は、国との見解のずれを如実に物語っている。
議論の対象となっている武雄温泉―新鳥栖間については、昨秋から水嶋次官と山口知事による非公開の意見交換が重ねられてきた。佐賀駅を通るフル規格での整備を主張する国に対し、県側は将来の負担を重く見ており、長らく平行線が続いている。今回の環境アセスメントの提案も、着工に向けた外堀を埋める動きと警戒する向きが強い。両者の溝は深く、具体的な着地点はいまだに見えてこない状況だ。
山口知事は面会後も水嶋次官と電話で協議を続けていることを明らかにし、対話の継続に含みを持たせた。山口知事は「もうちょっと真ん中にしませんかという話をしている」とし、さらなる歩み寄りを求めている。具体的な意見交換の内容については、「今回の議論はまだ始まったばかりなので見守ってほしい」と話すにとどめた。九州の未来を左右する重要インフラの行方は、なおも不透明なまま推移している。